〈独白する三兄弟が超怖い〉
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動いているものは基本は食える
近況報告。
長編進まず。

小説の書きかたがわかりません。
棒っきれのようなものだとしても何本か書いてきたでしょうに、俺。
これまでにも書けたんだから書けるはずだ、俺。
などの鼓舞をみずからに振舞って毎日、机に向かうのだが四苦八苦している
うちにこれまでの作品だってほんとに自分が書いたのか、わかったもんじゃねえ
という離人的な感覚に襲われ鬱々とする。

*  *  *

週末に久しぶりに外出。取材に出かけました。
某河川敷にひろがっているブルーシート・ヴィレッジといいますか、野営者の集落へ。
架橋の下にはわしゃわしゃ鬱蒼とした原生林、緑があざやかな場所に点々と映える、
ブルーシート・ブルー。それはのっぴきならない事情の色――
そこで起居するホームレスたちは、小屋を建てるだけではなく河川敷で田畑をやり、
自分とこの敷地をつぎはぎのトタンや木柵で区切ったりして、その区切りのあいだに小径ができて
いて、まんま田舎の村の様相を呈していておもしろい。

なにか川面のテクスチャーがおかしい。赤茶や黄緑の藻類が湧いて、ペットボトルが流れ出ないほど
みっちり浮いている。遠方の釣りびとがたてる波紋に、とろみを帯びた川面がうねっている。
とにかく異世界感たっぷりで胸が躍った。

自分は取材となると大胆になれるので、
集落のなかをずんずん散策する。労働や食料収集に出かけているのか、
それとも巣のなかで息を殺しているのか、住人はほとんど見かけない。
「なんの調査?」
ジグザグにのびる集落の小径で、じいさんと出会った。
精悍に日焼けし、麦藁帽子をかぶっている。
髭はぼうぼうに伸び放題だが、こぎれいな身なり。
紫色のポロシャツがどこか、やんごとなき雰囲気である。
紫色は冠位十二階では一番上だったはず、ホームレスにも不思議と気品のようなものを
かもさせるものなのだな、と俺は思った。

俺は小説を書いていることを素直に話した。
これはちょっとしたギャンブルなのだが、この場面では好転した。
じいさんはいっきに相好を崩した。
なにか総合感冒薬っぽい錠剤をフリスクのようにぼりぼり食べながら、
ぼうふらの湧く小径を川ぞいに歩く俺のうしろについてきて、
あれこれと教えてくれた。
昭和50年ごろからこの河原に住んでいること。
ナスやトウガラシを栽培しているが、あまりうまくいかないこと。
国交省や河川事務所との仁義なき戦い…
高倉健と同い年であること…

とりわけ印象的だった応答:その一。

じい「動いとるもんは基本的にはぜんぶ食えるで」
俺「野良猫とか犬も?」
じい「(無視)地球はでっかい船堀やな」

その二。

じい「こう…地面に穴っぽこをあけてな。真夜中に裸になって…」
俺「ええ~、ほんとですか?」
じい「大地とセックスや。そうやって処理すんねん。ここらの土壌は藻が沁みとるから、
   柔らかい。糸蒟蒻がからみついてくるみたいで名器やねん」

その二は取材後、河川敷の上で待っていた嫁に話してもまったく信じてもらえなかったのだが、
本当の本当にじいさんはそう言ったのだ。関西出身らしくフランクな語り口だった。

じいさんはずっとついてくる。イイ話をたくさん聞かせてもらった俺は、
さすがにここまで実りある取材にしてもらえて、タダというわけにはいかないだろう、
せびられるまえにこちらから謝礼を提示してしまおうかな。
かばんに入っている6Pチーズひときれじゃ怒られるか?
五千円くらいで勘弁してもらえないかな。
…などなど考えていると、
「ほなな」
と、じいさんは風のように去ってしまった。
その後、他の場所をひとしきり見てからさがしても、じいさんを見つけることはできなかった。
あれ? と俺は思う。ご相伴にあずかったじいさんの仙豆は、握った掌の汗でゆるゆると
溶けていた。

真夏のように暑い昼下がり、架橋の下の異空間にふさわしい出会いだった。
自給自足の田畑ならまだわかるが…集落の一角には住人がこしらえたものらしい
ガーベラの花畑まであって。

近いうちにまた訪れたい。

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