〈独白する三兄弟が超怖い〉
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糞蠅
渋谷シネマライズで『息もできない』という映画を観ました。
すこぶる評判のいい韓国映画で、映画関係者にススメられて。
期待にたがわぬ出来でした。

image[2]

原題は『糞蠅』。うんこばえ。
邦題も良いが…興行的にどうかとは思うものの、原題好き。

すげえな韓国。韓国映画はときに「これ…映画史に残るんじゃないスカ?」という
歴史の立会人な気分にさせてくれるどえらい傑作を輩出しますね。
僕にとってはポン・ジュノの『殺人の追憶』、パク・チャヌクの『オールドボーイ』
とかなんですけど、僕と同年代の新鋭ヤン・イクチュンが監督/脚本/編集/製作
/主演をつとめたこの『息もできない』は、鑑賞者によっては、つまりハマれば、
永く個人史に残る作品になるんじゃないか、と思うのです。
やんいくちゅんは自宅を抵当に入れるなりして、つまり持ち出しで予算をひねり出した
らしいんですけど、自主制作レベルでこの完成度かよと思うと、つくつぐ韓国映画の層の
厚さを思い知らされる。映画の良し悪しは金じゃないんですね。

ヤン演じる主人公は悪辣で、暴力的で、ときに繊細な瞳の色を浮かべ、欲望をぎらつかせ、
強がるが脆く真摯で美しい。なんというか、社会の底辺にあるすべての要素がリアルに溶
けあって、窯変してるような感があるんですね。
現実に生きる人間をずばっと射抜いた、このキャラクター造形にのっけから感情移入し
ちゃって、韓国版フォーレターワードを吐き連ねる「狂犬」の造形は、あっけなく類型に
おちいりがちなとこだと思うんだけど、このイクチュンの存在感は、最後まで生ナマしく
鮮度を失わなかった。
なんでなのか。よくわかりません。
ただ、この主人公があざやかに体現する、万国に通じそうな若者・馬鹿者たちの「半畜生」
感が、カメラワークやらストーリーテリングやらに横溢し、物語の膂力になって、ずばぬけ
た説得力で、こちらの心と目をぐわんぐわんに揺さぶりたおすのです。

物語は暴力のルーツをさかのぼり、強がりが崩れ去って止まらない涙を、ソウルの灯が滲む
漢江の水の情景が包みこみ、心地よいおセンチにこっちも包まれます。なんつうか、思うに
任せられない人びとの営為があって、人びとを見守る静謐な世界が語られて、エンドロール
が流れだす。なにか茫然自失とするしかない感触で。

作者の形をした作品だと思うのです。
語りたいことをもつ人間だけの、たくましい説得力がある。だから鑑賞後に茫然とする。
そういう作品に僕たちはときどき出くわしますね。こっちが参っちゃうようなやつ。
表現者が全身全霊、自分の魂の形を克明に刻みこんで、世間に剛速球で投げつけてきた
ような作品と。そういうものを作らなくちゃいけません。

暴力という汚物にたかる糞蠅の、奥深くに発光するきれいなもの。そんなもん、
そりゃ見てたいよな、と思いました。いまも思います。

上映館は少ないようですが、お近くの方はぜひどうぞ(^O^)
http://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/index.html

うー、すげえ映画撮りたくなりました。



コメント
オールドボーイは最高でした。
糞蠅ぜひ観てみたいです!
2010/05/11(火) 21:30:10 | URL | nori #-[ 編集 ]
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