〈独白する三兄弟が超怖い〉
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もくもく村
生まれて初めて買った煙草は忘れもしない、赤ラークだった。

自動車事故で助手席に乗っていた人の首がうまい具合にチョーンと飛んで、
近くの畑に飛頭蛮したという噂の交差点そばにある釣具屋の自動販売機へ、
真夜中にチャリ銭を握り締めて向かったのは中学一年生(13歳)の夏の夜だった。
よし、吸う。ぼくはついに煙草を吸うのだと思い、祖父のクレスタの小物入れから
100円ライターを拝借して赤ラークとセットにし、玄関脇の下駄箱に隠した

なんでそんなところに隠したのか(それで隠した気になったのか)、
なんでその日のうちに吸わなかったのか(ライターまで準備しておいて)、
ちょっと今となってはどういう心境だったのか、よく覚えていない。
おそらく「吸いたい」という憧れが強すぎて一種の儀式的な段階が必要になり、
その下準備をするだけで異常に興奮して納得してしまったのではないかと思う。

翌朝、学校に行く前、生白いヘルメットをかぶって自転車にまたがったところで
親父に呼びとめられた。
妙な話だが、何か小遣いでもくれそうな顔をしていた。
「――おい。これ、お前か」
玄関に背を向け、隠すようにこそっと、親父は俺に赤ラークを見せた。
瞬間ファーッと頭が熱くなり、卑屈な愛想笑いのようなものが俺の顔面に湧いた。
俺はシュパッ、と煙草から視線を抜いた。
「……うんん~? いやぁ~?
「お前じゃな」
「……ええ~?
「まだちょっと、早いな。そう思わんか」
俺はどうやら叱られるわけではないと察し、また今、親父が俺との間に発生させようとしている
一種の秘密の共有感を何か大変に大人めいたものとしてこそばゆく、面映く感じた。
もはやこどもではないのだと認めてもらえたような気になった。
俺は自転車のペダルをシャッと逆に一回転させてパシッ、と片足で止め、
「……そうやな。マァちょっと、早かったかな。そんな気はしたんやけど
ベイシティ刑事の藤竜也か誰かをイメージした苦笑を浮かべて、頷いた。
親父は赤ラークを自分のポケットに入れ、代わりに財布を出した。
「これはわしが買う。なんぼだった」

気持ちはわかるが最低あと五年は待て、と云って親父は仕事に行った。
俺は何故か、既に喫煙者となったかのような余裕が胸に生まれていた。

親父からもらった赤ラーク代は、しばらくの間学生鞄の裏側のジッパーの中へ
仕舞い込んであったように思うものの、結局、何に使ったのかは覚えていない。
少なくとも以後、真夜中にこっそり自販機へ行くことはなかった。
多分、納得したのだろう。


 ※ ※ ※ ※


が、何年か経って高校生になるとヤンキーに誘われて校舎の裏で
ヤニ旨いわ
などと怖気立つような台詞を口にするのが末路であったわけだからまあ大体
喫煙者などというのはこの程度の人間であって社会のくずであります。
私はもうクズなんです。ニッポンのボトムズなんです。

皆さんの地方、雪の加減はいかがですか。
雪でお仕事がお休みになったりはしておりませんか。
今日も現場だ煙草がうまい。
ご清聴ありがとうございました。
コメント
てっきり…
タイトルから夢先生のお話だと思い読み進めていましたら五代目でしたか。

現在、Σを読んでいまして切断まだ読み始めていません、申し訳ない。
2011/02/12(土) 16:24:27 | URL | TS #-[ 編集 ]
基本的に赤字のゴシックがあったら俺だと思います。ありがとうございます恐縮です。
2011/02/12(土) 19:25:02 | URL | 松 #SFo5/nok[ 編集 ]
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